大きな鉄の門の前にいるキノが門番の人から「旅人さんが使える門は一か所だけです」。
と言われるところから物語は始まります。
5話目「嘘つき達の国」のあらすじと感想
中には森が広がり、地面には紅葉の葉が絨毯のように敷き詰められています。
キノの吐く息が白いことから、この国の空気が冷たいことも伺えます。
キノがエルメスにまたがり出発しようとすると、「おーい!おーい!」と呼び止める声がします(ちなみにこの声、「おーい」だけなのに石田彰さんだ!)。
なんだろう?キノとエルメスはその場で待っていると、男性が呼び止めながら走り寄ってきます。
「やあ、旅人さん。どこかの国で、僕の恋人に会わなかったかい?僕のことを彼女から聞いていなかったかい?言伝とかはないかい?」
とキノに尋ね、キノは首を横に振ります。
すると男性はキノに言います。
「そっか。僕の恋人は5年前にどうしても仕方のない理由で、いきなり旅に出たんだ。ただ必ずいつか帰ってくると言い残したから、僕はいつまでも待っているんだよ」
するとそこに、上着を持った女性が現れます。
「そんな恰好で外に出ていたら、風邪を引いてしまいますよ。寒いですから」
と男性に言うと、男性は女性に言います。
「ごめんよ。僕の恋人が帰ってきたと思ったんだ。また違ったよ、残念だ」
男性はキノたちに女性は自分の家政婦でとてもよく働いてくれて助かっていると紹介します。
すると男性が大きなくしゃみをしたので、女性は男性に早く帰りましょうと、来た道を戻るように誘導して行きますが、男性は戻りながら「まだかな。まだ彼女は帰ってきてくれないのかな」と言うと、女性は「いつかきっと、帰ってらっしゃいますよ」と優しく男性に言います。
そんな二人の後ろ姿をキノとエルメスは黙って見送ります。
国の中にあるお店でキノは国の人たちに、自分の旅の話をしています。
国の人たちはキノの話す様々な国に興味深々です。
どうやらこの国にはあまり旅人が来ないそうです。
国の人はキノに「旅人さん、何か聞きたいことはあるかね?」と尋ねると、キノは考え込みます。
するとエルメスが「城門脇にある森で男の人に会ったけど、彼はどうしたの?」と尋ねます。
すると皆がザワザワし始め、一人の男性が「彼はその・・・可哀想な人なんだよ。彼のことは俺から話そうと思う」と言い、男性はキノに話し始めます。
この国は5年前に革命が起きて、その時の王様がとても横暴な王様だったこと。
当時、城門脇の男性は警察官で、革命を実行するリーダーだったこと。
城門脇の男性には国外れの農家の娘さんの恋人がいて、その恋人とは革命前の一年前に街に野菜を売りに来て知り合ったそうです。
娘さんは長い髪をした美しい人で、とても二人は仲が良くて絶対に二人は結婚するのだと思ってのですが、革命が近付いていたこともあり、結婚の日時が決まった後に男性は娘さんと別れたことを聞かされたそうです。
死ぬかもしれないし、何をするかも言えないこともあって、娘さんに城門脇の男性は無理やり別れを告げたとのことです。
最終的に革命は成功したそうです。
男性たちは宮殿に突入をして、王たちは家族と共に車で逃げだそうとしていて、城門脇の男性は爆弾を投げ込んで、見事に車を吹き飛ばしたそうです。
そして革命は成功したそうなのですが、男性は見てしまったそうです・・・車の中に、ドレスを着た王女は城門脇の男性の恋人だったそうです。
城門脇の男性の恋人は、王女様だったみたいで、お忍びで街に来ていたようです。
キノは尋ねます。
「すると、あの男の人の恋人はもういないんですね?」
男性は語ります。
城門脇の男性は憎むべき王女と自分が愛し合っていたこと、そして自分の手で王女を殺してしまったことに耐え切れなくなってしまって、頭がおかしくなってしまい、本当ならば英雄として新政府の要職につくハズだったそうなのですが「彼女はどこに行ったの?」としきりに聞いてくるそうです。
見かねたお医者様が「あなたの彼女は旅に出てしまいましたが、必ず帰ってくるから待っているようにと言っていましたよ」と嘘を付いたそうです。
この国では一般人は城壁の外に出ることは出来ず、城門脇の男性はそんなことさえも分からなくなってしまい「じゃあ、彼女を待つからと」森の中に5年間ずっと住み始めたそうです。
新政府は彼の為に家を建て、彼の世話をしてくれる人を雇ったそうなのですが、けれども嘘を付くことが不憫過ぎると、どの人も長くは続かなかったそうです。
今世話をしている彼女は旅人で、3年前に行倒れ寸前のところを見つけ、事情を知らない外の人は具合が良いと思って雇ったそうですが、懸命に働いてくれているとのこと。
しかし、城門脇の男性の具合が良くなる兆しは全くないそうで、これからもずっとそうだと思う・・・けれども、その方が幸せなのかもしれないと男性は言います。
国の人たちはそんな「帰って来ない恋人を死ぬまで待ち続ける」城門脇の男性を不憫に思い、嘘を付き続けるそうです。
そのお話しを聞いた後にキノが森をエルメスと走っていると、城門脇の男性のお世話をしている女性の馬車の車輪が泥のぬかるみにはまっているところに遭遇します。
キノは車輪が抜け出せるように手伝ってあげると、女性からお礼にお茶に招待されます。
森の中のお家のテラスで、キノと男性に女性は自分も含めてお茶を入れます。
女性が席を立った時に、男性はキノに「ねえ、旅人さん。これからも他の国に行くんだよね?もし彼女に出逢ったら・・・」と言うと、キノは「ええ、あなたのことを伝えますよ。待ってるって」と言います。
男性は嬉しそうに「うん、頼んだよ」と言うと、女性がお菓子を持って戻って来ます。
すると「あら?また誰か城門にいらしたのかしら?エンジンの音が聞こえた気がします」と言うと、男性は席を勢いよく立ち上がり「彼女かもしれない!行ってくる」と城門に向かって走り出します。
するとエルメスが「これで良かったの?エンジンの音なんて全然聞こえなかったけど」と女性に尋ねると、女性は
「ええ。あの人といると、キノさんたちとのんびりお話しが出来ませんから、これでしばらくは戻って来ないでしょう」
「これで良いんです。私たちの兄弟も隣の国に逃げてのんびり暮らしています。そして私は愛するあの人の傍で生きていくことが出来ます」
と答えて静かに席に座り紅茶のカップを手にします。
するとキノは女性に
「あなたはこの国の王女様ですか?」と尋ねると、女性は微笑んでうなずきます。
女性はエルメスに促されて、話を続けます。
「私はこの国の王女して生まれました。スパイから革命が迫っていると知り、私はあの人に接触しました。信頼出来る情報を父に届け、革命の前に財産を持って逃げるためでした」
「しかし私は私を一人の田舎娘として愛してくれたあの人を、いつしか愛するようになりました。しかし、それは終わりました。あの人が私に決定的情報をもたらして・・・」
するとキノは「理由を言わずに別れたことですね、直ぐに革命が起こると知った」と言います。
「ええ、身代わりが役目を果たしてくれて、全てが計画通りに行きました。あの人のことは無理矢理忘れようとしました」
するとキノは「でもあなたは戻ってきた」と言います。
「隣国で私は、スパイからいくつかのことを聞きました。あの人は私を殺してしまい、病んでしまったこと。そして、あの人の世話をする人が必要とされていること。私は長いこと悩んで、この答えを出しました。でも、とても苦労しましたよ。両親を説得したり、旅人になってみたり。国に入ってから家政婦として雇われるように仕向けてもらったりね」
するとキノは「再会した時にあの人はなんと?」と女性に尋ねます。
「こう言ってくれました。『ああ、彼女が帰ってくるまでよろしく』って。とても嬉しかったです」
と笑顔でキノに答えます。
エルメスが「そお?」と尋ねると、女性は
「ええ、私はまだあの人を愛していて、あの人は私を待っていてくれる。そして、傍にいられるんですから。私はあの人と知り合った時から嘘をついてきました。私はこれからも嘘を付きながら、愛する人の傍で生きていくのでしょう。私は幸せです」
とキノに笑顔で答えると、キノも笑顔で「お話し、ありがとうございます」と答えます。
すると男性が城門から「ああ、違ったよ。門番が発電機を動かしただけだって言ってた。誰か来たんじゃなかった。いつだろう・・・いつになったら、彼女は帰ってくるのだろう・・・」と言いながら戻って来ます。
すると女性は「いつかは分かりませんが、きっと帰ってらっしゃいますよ」と優しく答えます。
すると男性は「僕は怖いんだ。ひょっとしたら、僕は彼女から忘れられていないかい?」と尋ねると、女性は「いいえ、あなたは忘れられてなんていませんよ。決して」と首を横に振りながら優しく答えます。
キノが出国する日、城門に男性と女性も見送りに来てキノの背中を見送りながら男性は「行っちゃった、彼女に言伝をしてくれるだそうか?」と女性に尋ねると、女性は「きっと大丈夫ですよ」と答えます。
すると男性は「エンジンの音がするよ!また誰か来たんだ!!」と城門にかけて行きます。
女性は「あれはきっとエルメスさんの!」と声を掛けますが、まあいっかというような表情で笑顔になり、森の中のお家に戻りながら「さ、お昼は何にしましょう」と言いながら歩いて行きます。
城門の外でエルメスのエンジンをふかして出発しようとするキノをエルメスが止めます。
見ると、男性が城門番の人を振りほどいてキノの元に駆け寄ろうとしています。
「旅人さん、ちょっと待って!言いたいことがあるんだ」
キノは「恋人さんへのメッセージですか?」と男性に尋ねると、男性は
「いや、キノさんとエルメスさんにはもう一つだけ知っておいてもらいたい。これで良いんだ、私は幸せだ」
「私はもう何も壊したくはない。王家のスパイだった友人の生き方も、何も知らない優しい人たちの想いも、革命の成功と新しい国のシステムも、そして私を利用しようとしただけではなかった私の愛する人との生活も」
「今は何ももう壊すことはない。これで良いんだ」
キノは茫然として「あなたは・・・」と男性を見つめると、
エルメスは「嘘つきだね、ここの国の人はみんな、嘘つきだ!」と言うと、
男性はふっと笑って「さよならだね、私は戻る」とキノに言うと、
キノは「さようなら。お二人ともお元気で」と笑顔で答え、エルメスは「じゃあね、英雄さん。家政婦さんによろしく!」と言い、男性の背中を見送って旅立ちます。
これ、EDの後のこの男性の真実が衝撃的過ぎて、涙がボロボロ零れてしまいました。
女性の話の時も少しウルウルって、愛する人が瘴気ではなくて、それでも傍にいられるならば良いという想いだけでもウルってくるのに・・・男性の想いは、愛する彼女だけではなく、国の人たちや友人全てに対しての想いで・・・凄く嘘は嘘なのに、こんなに愛に溢れた嘘ってあるんだなって思わさせられました。
みんなが自分ではない誰かを想って嘘をついている。。
本来嘘のつき方ってそういうものなのかもしれませんね、死ぬまでこの二人はずっと嘘を付き続けて一緒にいるのでしょうか。
ずっと嘘をつき続けるというのも辛くて大変で苦しいことですが、それよりも相手を想う気持ちや愛する気持ちが勝るというのは・・・美しい過ぎます。
今の世の中にもこういう恋人や人たちが少しでもいれば良いなと思いました(人をここまで想って行動できる人という意味です)。
毎回キノの旅は感動や考えさせられます。
本当に色んな人に観て欲しいアニメの一つです!