目次
あらすじ
――ずっと待っていた初恋の人は、妖だった…。
幼い頃から、妖怪が見える原田実沙緒。そんな彼女をいつも守ってくれたのは、初恋の人・鳥水匡。
「いつかまた迎えにくるから…」月日は流れ、子供の時に交わした約束どおり、16歳の誕生日の前日に実沙緒は匡と再会する。 しかし、そこで実沙緒は自分が「仙果の娘」と呼ばれる特殊な人間だということを知らされる。 「仙果の娘」とは妖に力を与えるという特殊な女性で、16歳を境にその力が発現し、仙果の血を妖が飲めば寿命が延び、肉を喰べた妖には不老不死を与え、花嫁に迎えればその一族に繁栄をもたらすと言われていた。 そして、いつも実沙緒を守ってくれていた初恋の人・匡の正体は、実沙緒を狙う妖「天狗」だった。
実沙緒と匡は、実沙緒を狙う他の妖達との争いの中で少しずつ絆を深め、遂に結ばれる。しかし、幸せを掴んだ二人を更なる試練が待ち受けていた(wikiより拝借)
『ブラック・バード』最終話まで読んだ感想
最初は何気ない恋愛漫画なんだろうなと思ったのだけれども…設定はよくある妖の人間の恋なのですよ。
しかも幼少期に出逢っていて、人間の少女は覚えていないけれども、妖の方はずっと忘れずに覚えている。
で、その人間の少女は不思議な力を持っていて、色んな妖から狙われるのを、妖が守ってくれて…って本当にあるあるの設定なのですが、匡様の美沙緒ちゃんへの想いが深すぎて。。
最初からなんか美沙緒ちゃんあんまり好きになれないなぁとか、可愛く思えないなぁとか、なんでこんな女の子なんだとか、正直全然良く思っていなかったのですよ!
なのに…読んでいくと匡様だけじゃなくて私もなんか惹かれてしまうし、この2人は一緒じゃなければダメなんだなとか。。
愛し愛されるということを凄く感じる作品でした。
途中で横恋慕が登場して主人公あるあるで甘い考えを抱いたりもあるのですが、この作品の驚くところは主人公が妊娠するのです!
作品内でそういう愛し合うシーンがあるのですが、少女漫画ではなかなか妊娠しないじゃないですか!?
大体結婚してとか、付き合って終わりとかが少女漫画では多そうなのに、この作品は主人公が妊娠してしまう。
しかも普通の身体ではない主人公は出産後に命を落としてしまう危険があることが分かる。
匡様は主人公の美沙緒ちゃんに死んでもらいたくなくて堕ろさせようとするのです。
とにかく匡様は美沙緒ちゃんを優先して色々策を練るのですが、美沙緒ちゃんが望むことは産みたいということと、ずっと死ぬ直前まで匡様の傍にいたいということ。
そのお互いがお互いの気持ちを受け入れてからは、とても良かったです。
作者さんの実体験で描いていたのかな?
妊婦さんとお風呂に入るシーンにしても、匡様が血管がリアルに皮膚から見えててグロいにしても、つわりを労わるシーンにしても。
2人の絆が大体強くなっていくところが恋愛漫画の見せ場だと思うのですが、この漫画はなんとなくその後の2人の気持ちの揺れも描かれていて、美沙緒ちゃんがご両親になんて言おうと悩むところにしても、親御さんからどう思われるのが本当に幸せな結婚なのかも。
2人が良ければそれで良いというのではなくて、結婚したらお互いの家のことも考えなきゃいけない、子どもが出来たらお互いが本当にしたいこともちゃんとお互いで確認しなきゃいけない、産む時に女性が死んでしまったら旦那さんはちゃんと育ててくれる意志を強く持っていてくれなければいけない…。
単純に優しくて頼もしくて想ってくれるから好きとかではなくて、美沙緒ちゃんと幼少期に出逢って迎えにいくと決めて10年頑張って天狗の当主になって、何がなんでも守り抜こうと思って、子どもが出来て出産時に死ぬかもしれないと思ったら、地位とか全てを捨てても一緒にいたいと思ってくれて、現実ではこんなにお金もないし、仕事があるから傍にずっといてもらうこともなかなか出来ないけれども、それでも想いが凄く溢れてて良いのですよね。
死んだ美沙緒ちゃんに三日三晩ずっと口づけをして目を覚ますまで腕の中から離さないことにしても、産まれたあとに美沙緒ちゃんに後遺症が残ってしまうことに関してもちゃんと支えてあげて、それを子どもが悪意なく口にしてしまうのも本気で怒るのはちょっと怖いけれども、それでも匡様の中ではずっと美沙緒ちゃんが一番大事で。
居なかったら死んでしまうとは口にしても、現実では誰も死なないけれども妖は本当に死んでしまいそうで…しかも匡様は子どもの頃からずっと美沙緒ちゃんを想っているから誰も代わりにはなれないのですよね。
美沙緒ちゃんが子どもを産みたいと、死ぬと分かりながらも決意するところも母親はこうでありたいなって思わされました。
匡様にお仕えしている相模さんと奥様のあやめさんの2人の関係も凄く良くて、結婚前に相模様があやめさんに結婚をしても自分が一番大切なものは匡様で、二番目は美沙緒ちゃんみたいなことを言うのですよ。
だから一番大切に出来ないからと断り文句を。
けれども、あやめさんはならば自分もそうしますねって私も一番を相模さんではなくて、匡様や美沙緒ちゃんを一番に同じように思いますって言ったのが結婚の決め手だったそうです。
あと、あやめさんは身体が弱かったのですが、相模さんの前では常に気丈に明るく元気に振舞っていたのを相模さんはちゃんと知って見ていたところとか。。
この作品は登場人物もそれぞれが魅力的に思えました。
本当によくある少女漫画のようなのですが、心が無意識にハマったというのが正しい表現かもしれません。
ところどころに琴線が触れてしまう作品なのでしょうね。
親子3人で最後海に行けたのも本当に良かったです。
愛して愛されるって、やはりとても素敵だなと思うのと、思春期って相手に対して不安や不満など色々持ってしまうものではないですか?
そんな中で幸せな結婚とか恋愛をするなら、どのような相手を選ぶべきなのかも良いバロメーターにもなるなぁと思いました。
子どもにどのように接するかとか、仲間に対してとか、自分のことをどのように接してくれているのかとか…番外編などのお話も凄く読み応えがありました。
三人兄弟の次郎さんが太郎さんより自分の方が優れていると思うのですが、力だけではなくちゃんと仲間や人を思いやれる人間が一番優れているという話。
お時間と余裕があったら是非色んな人に読んでもらいたいと思った作品です。