漫画「アシュラ」産まれてくる子どもの気持ちを考えさせられる作品 ※ネタバレ含む

あらすじ

平安時代末期、飢饉によって屍が累々と横たわり、ある者達は人を殺して人肉を貪り食らっていた。その一人である妊娠した狂女は、やがて赤ん坊を産み落とす。狂女は「アシュラ」と名付けたその子をかわいがるが、やがて空腹に耐えかね焼いて食おうとする。その時、落雷によってアシュラは川に押し流され、岸に辿り着くも誰にも育てられないまま獣同然に生き抜く。ある時、人狩りに捕まり連れていかれた先で人間としての生活、仲間、愛情を知るが、生みの親と出会ったことで凄惨な出生の秘密、自分が決して家族との生活を過ごせないことを知り苦悩する。そして、その地に見切りをつけたアシュラは、自分を慕う孤児達を引き連れ都を目指す(wikiより抜粋)

読んだ感想

映画のアシュラを観て、原作も気になってこの度手にしてみました(映画「アシュラ」の感想はこちら⇒『映画『アシュラ』を観ての感想 ※ネタバレ含みます』)

気が狂った母親のお腹に宿ったアシュラ。

貧困で食べる物も殆どないような世の中に産まれてきてしまいます。

母親は気が狂っていながらも本能で生きようとするあまり、何も食べる物がなくなってしまった時にアシュラを火に放り込んで食べようとします。

幸いアシュラは助かるのですが、このことを最後まで許せないまま作品は終わるのを見ても、幼少期に親から与えられた記憶は一生つきまとうのではと思いました。

全身火傷と正しい教育や愛情を与えられずに育ったアシュラは野生児として言葉も話せないまま育つのですが、最後まで「生まれてこないほうがよかった」というのは現代少子化問題ということで、考えさせられるものがありました。

子どもを産むというのは、産んで最低限育てたら良いわけではないのでしょうね。

この漫画を読むと、子どもを産んでもその子どもがちゃんと死ぬまで生きていける何かを与えられなければ親として失格だと思わされます。

食べる物がなくて、自分が死んだらその肉を食べて生きて欲しいという女性も出てきますが、その肉を食べて生きた父親は自殺をして、子どもは罪の意識に悩まされます。

今日や明日はどうなるか分からない暮らしをしている子どもたちは、産まれてきて良かったとは誰も思っていません。

裕福な家庭の子どもは親の権力を振りかざして、好きな女性さえも手に入れられてしまう。

その女性も飢えや親を見殺しには出来ないと最初は拒んでも最終的には愛などでは腹は膨れないとの判断をします。

ギリギリの人間が人という意識をどこまで保てていられるかをまるで実験をしているかのような世界でもあり、この作品を読むと自分が満たされて最低限の生活が出来ている状態にこそ、人間は人に優しく出来、人に優しくされないと人は人に優しく出来ないということも学びます。

今不妊活動をしていることから、好きな人の子どもが欲しいという親の願いだけで子どもを望むことは、本当に正しいことなのかなとちょっと考えさせられてしまった作品です。

今の世の中や、今後の日本を考えても、産まれてくる子どもたちは決して幸せになれるとは思えません。

それなのに、子どもが欲しいと思ってしまうのは読んでいる最中や読んだ後も、とても罪深いことなのではと思ってしまいました。

アシュラのお母さんも反対を押し切って家を追い出されてアシュラを産みますが、女性1人では育てることが出来ず、気が狂ってしまってアシュラを手にかけてしまいます。

ちゃんとした生活環境で産んで育てられたら、このような悲劇もなくアシュラのような子どもも産まれなかったことを考えると、少子化問題…子どもが幸せに生きられる世の中にならない限り、解決しないかもしれないですね。

ここまで今の世の中は酷くはないですが、近い将来の日本を大袈裟に描いたと捉えて読むと他人事には思えない作品でした。

映画よりもやはり原作の方が内容は深いので、是非興味を持ったら読んで欲しい作品です。

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