今回のお話しは奴隷として買われた女の子のお話しでした。
10話目と6話目の順番が違うのは意図的なので、ご了承くださいませ。
6話目「雲の中で」のあらすじと感想
どんな時でも人を信じなければいけない宗教国家で、いつものように商人は商品を売りに行った時に、いつもより少しだけ払いが悪かったそうです。
その時にその国の長が、この子はよく働きますからどうぞお連れくださいと女の子を差し出したそうです。
商人は女の子は孤児だったからきっと厄介払いだろうと思います。
商人の1人は女の子の首輪の鎖を引っ張りあげて首を絞めて放り投げて
「俺たちをどう思う?お前を売った国をどう思う?さぞかし憎いだろうと問いかけます」
すると女の子は
「いいえ、どんな時も人を憎んではいけません。それが真理ですから」
それを聞いた商人たちは大爆笑をして
「お前はお前を売った人間をまだ信じているのか」
と言います。
しかし女の子は
「教祖様はきっと私に広い世界を見てこいと命ぜられたのだと思います。もしかしたらこの方が私にとって良い運命が開けると将来を今試されているのだと思います」
商人は女の子に
「お前はどうしようもない馬鹿だと、お前は売られたんだよ。痛ぶられても、殺されてもどうしようもない状況に放り込まれたんだ。それなのに恨んだり、憎んだり、隙あれば殺してやると思ったりしないのか?」
と尋ねますが、女の子は
「いいえ。人を恨んだり、憎んだり、殺したいと思うことは悪です。そのようなことは思いません。思ってはいけません」
と言います。
男性は呆れながら女の子に
「なぁ奴隷。よく聞け、人間の世界はどうしようもなく腐っている。他人を簡単に裏切って、傷付けて、時に殺す。そんな人でなしだけが生き残れる世界だ」
と言いますが、女の子は
「いいえ。世界は素晴らしいと思います。人はお互いを愛し合い、尊敬しあい、生きていけると思います。いつの日かみんな気付いてそんな人だけの美しい世界がくると思います」
と言います。
商人はますます呆れて
「お前はそれを本気で信じているんだな」
と尋ねると、女の子は
「はい。私は人を恨んだり、憎んだり、殺したりは決してしません。それよりも自分が死ぬ方を選びます。その時私は私を殺す人の前で微笑みながら死んでいくでしょう。そうすれば私を殺す人もいつか解るのです」
と笑顔で言います。
商人の1人は「ダメだ、こいつ」と呆れます。
すると商人のお母さんか奥さんか年配の女性が「ただでさえ使えないのだから奴隷をサボらせるんじゃない」と商人たちに怒鳴ります。
年配の女性は「カマドが出来たなら皿を洗ってきな!」と女の子に言い、他の女性たちが沢山草を取ってきたのを見て優しく褒めた後に「奴隷!これを洗ってきな」と女の子に怒鳴りつけます。
女の子は草を洗いながらふと何かを考えて手を止めますが、年配の女性に手を止めるなと怒鳴られてまた作業を進めます。
そんな様子を見て商人の男性は
「例えどうなっても俺はあんな人生はごめんですね」
と言うと、もう1人が
「あいつは運命に負けた人間だな。俺の死んだ爺さんがよく言っていた。人間は自分の力では運命を変えられないってな。運なんだよ!この世の全ては。俺たちは運が良いからこうして商人をして国々を渡り歩いて行ける。あの奴隷にはそれがなかったんだよ」
と言います。
夕飯の時間になり、商人の家族たちは机を囲み、女の子は離れた石の上にいます。
女の子はふとあの草が毒であることに気付き、急いで立ち上がり商人たちに食べてはダメと伝えようとしますが、既に人々はスープを口にしています。
女の子は涙を零しながら、なんで、なんでと口にしますが、自分のスープを見て思いついたかのように「私もみんなと一緒に」と思い一気に飲み干そうとしますが、器に石をぶつけられてスープが全て溢れてしまいます。
商人の男の子が得意げに
「あの奴隷はスプーンを使わずに豚のようにスープを飲もうとしていたから僕は石を投げつけてやったんだ!お父様僕は間違えていますか?」
と言います。
大人たちは口々に男の子を褒めます。
女の子は「ダメです、坊っちゃま。どうかそれ以上食べないでください。お願いします」と言いますが、男の子は「なにあれ?誰か黙らせて」と言います。
女の子はそれでも「もうこれ以上は食べないでください。その草には毒…」と言いかけたところで他の大人に頭めがけて石を投げつけられます。
女の子はその場に倒れてしまいます。
意識朦朧した中で商人の会話が聞こえます。
男の子が
「お父様、お願いがあります。あの奴隷ですけど、僕に安く売ってくれませんか?」
と言います。
お父さんは「どうするつもりなんだ」と尋ねると、男の子は
「殺します。僕は戦える立派な男になって、みんなを守りたいのです。いざという時に人を殺すのを躊躇するような、そんな弱虫ではいたくありません。ですから、あれを散々痛めつけて、その後で手足を打って、それから腹を切り開いて殺します!」。
お父さんは
「良いだろう。まだ幼いと思っていたが、お前もそろそろ一人前の男になる時が来たということだな」
と言うと、男の子は「ありがとうございます!敬愛なるお父様」と大喜びをします。
他の商人たちも励まして、早く強くなって俺たちを楽させてくれよーと微笑ましい会話かのように話を進めます。
女の子は身体を起こして空を見上げて大声で叫び声をあげます。
それを見て、気味が悪いから早く黙らせろと言った後に、商人たちは次々に苦しみ出して倒れて死んでしまいます。
女の子が呆然としていると、まだ意識のある声が聞こえます。
商人の男性に駆け寄り女の子は声をかけると男性は「何があった?」と女の子に尋ねます。
女の子は「この辺りの草には毒が入っていて、私が気付くのが遅くなってしまったばかりに」と説明をすると、男性は野菜が好きではなくてあまり食べなかったそうです。
男性は女の子に
「お前は一口も食べなかった…?違う…おまえは…あのとき…豪快に…食べようと…した」
と言うと女の子は目に涙を沢山浮かべて
「そうです!私は言えなかったんです。私は酷い人間です。あのとき、一瞬だけ思ってしまったんです。みんなが死んでも良いと思ってしまったんです。みんなを助けられなかったんです。私のせいでみんな死んだんです。私は人殺しとして生きていたくないから、みんなと一緒に死のうとしたんです」
と号泣して、商人の男の人に
「どうか、どうか私を殺してください。みんなと一緒に死なせてください」
と懇願します。
男性は銃を手に取り
「そうだったな…ダメだ…もう力が入らん…」
と言い、女の子は男性に「どうすれば良いんですか?」と尋ねると男性は今教えると言い、女の子の首輪の鎖を外します。
女の子は驚きます。
男性は「どうだ…これで撃ちやすくなっただろ?」と女の子に言います。
そして銃の撃ち方を説明して、自分に銃口を向けて撃たせます。
女の子が驚いていると、男性は死ぬ間際に
「お前が言った通り、いつか解るさ」
と言って息を引き取ります。
すると車の中から声がして、声の主のところにいくとモトラドが女の子に話しかけていました。
暗い顔の女の子にモトラドはこれから自由になったというのに、なんで暗い顔をしているのかと尋ねると、女の子は自分は人殺しだと言います。
でもモトラドは
「最後のは男性の自殺だし毒草を食べたのもあの連中のポカだ」
と言うと、女の子は
「でも私がちゃんと言っていれば!」
と言うとモトラドは
「言っていたらあの連中が食べるのをやめたってか?んなわけねーよ。嘘を言うな奴隷と言って鞭を打たれておしめぇだ。どっちにしろ連中は運がなかったんだよ。そしてお前には運があった。お見事!これからお前の自由さ。自由なんだよ?聞こえた?」
女の子はモトラドに
「教えて、どうやったら私は死ねるの?」
と尋ねるとモトラドは
「簡単さ!生きればいい。生き物は生きていたらいつかは死ぬ」
というと、女の子は
「そっか…生きなきゃいけないのか…解るまで」
モトラドは
「そうさ。生きればいつか人生は終わる。終われば死ねるのさ」
と女の子に伝えると、女の子は
「そっか…そうするしかないのか…そうするか…」
というと、モトラドは
「そうしてもらわねぇとこっちも大変なんだ!お前にはやってもらいたいことがある。こんなところとはオサラバするのさ!お前にはトラックの運転を教えてやる。その前に隣のトラックから金目の物を移動させることを忘れんなよ。どうせ文句を言うやつは誰もいねー」
と女の子に言います。
この後モトラドと女の子は旅をして、色々なことを経験するみたいです。
お話はこの後も少し続くのですが…個人的にはここまでが心に残った感想です。
このお話を見た後、ずっと今回の10話目のお話を見るまで、このお話がずっと引っかかっていました。
感想を書きたいのに、何故か手が止まってしまったのは書くのに時間が掛かるからだけではなく自分の中で消化出来なかったからです。
このお話を見たときも涙が溢れたのです。
そして、自分という人間がなんて醜い人間なんだろうと思ってしまったのと、今の自分は商人側の人間だなと思いました。
不快な人間がいたら私は迷わず相手の不幸を望んでしまうし、酷い人間が死んでも傷ついても、自分がその人間を酷いと思ったら、それが当然だと思ってしまうからです。
昔はそんなことはなくて、人を憎んだ後に後悔や自分の醜い感情に自分の存在を消したいと何度も思って試みようともしたのですが、ある時から商人が最初に女の子に言った通りに「人間の世界はどうしようもなく腐っている。他人を簡単に裏切って、傷付けて、時に殺す。そんな人でなしだけが生き残れる世界だ」と思って生きています。
社会で2ヶ月前まで働いていたのですが、その時ももっともっとそうならないと生きていけないと思っていました。
誰よりも酷くて自分勝手で裏切って傷付ける人間にならないと生き残れないと本気で思っていながら、そういう自分を許せなくて、そうなれない自分との葛藤の日々に生きるのが辛くなってしまって…そしたら旦那さんが、死ぬより生きてて欲しいからと専業主婦にしてくれたのです。
今の時代にこれがどれほど罪深いことかは私は理解していて、最初は凄く旦那さんだけに家計を負担させることに苦しんでいたのですが…今はまだ2ヶ月なのに人に対して前より優しい気持ちでいられることに気付いたのです。
世の中にとって自分が存在悪にも思えているから、家から出ないことこそ人のためになるようにも思えているからかもしれないです。
話は脱線しましたが、人を恨んで憎みながら生きるのは正直辛いです。
私はこの女の子のように思いながら生きていきたいと思います。