あらすじ
お父さんは、ボストンバックと謎の小さな箱を持って彩たちの家に突然やってきた。
とんかつにかけるソースをめぐり激論を交わす夕食。うすい壁一枚で仕切られた隣の部屋にいるお父さんの存在にあたふたする夜。お父さんと伊藤さんの間に不思議な友情が芽生えていく日曜日の午後・・・
爆弾のように激しい性格のお父さんは、彩たちの穏やかだった日常を一変させてしまう。
それでも毎日のちょっぴりおかしなハプニングを経て、3人がひとつの家族のようになりかけた矢先・・・
「しばらくでかける」情けない文字で書かれた置き手紙がひらりと一枚机に置かれ行方不明に。
すれちがう3人の心が通じ合う日は、果たして訪れるのかー? お父さんが彩たちの家にやって来た、本当の意味とは―!?
「お父さんと伊藤さん」を観た感想
最初はなんで上野樹里さん演じる彩さん、リリーフランキー演じる伊藤さんと付き合ってるの!?
伊藤さん50歳代のおじさんで、しかもバイトだよ!?
と思ったのに、話を進めて見ていくと、伊藤さんがとにかく良い。
彩さんは伊藤さんと同棲をしているのだが、そんなある日お兄さんから呼び出される。
話を聞くと彩さんにお父さんと暮らして欲しいとのこと。
お兄さんの家では受験生がいることと、そのこととお父さんのことでお兄さんの妻のメンタルが病んでしまったようだ。
彩さんはお兄さんに断りを入れて家に帰ると、お父さんが既にいる。
ご飯にしても、トンカツのソースにしても、なにかとケチをつけてくるお父さん。
元教員だからなのか、自分が全て正しいような口調だったり、独特の言い回しや指摘をしてきます。
そんなお父さんにイライラする彩さんと、気難しいお父さんとワガママな彩さんの間に立って2人の仲を上手に保とうとする伊藤さん。
彩さんは少しでも早くお父さんに家から出て行ってもらいたいと普段の生活の中からでも垣間見える。
そんなお父さんと上手に接する伊藤さん。
お父さんもどこか楽しそうだ。
後半お父さんが失踪をするのだが、伊藤さんが携帯の機能からどこにいるかを友人に頼んで探してもらう。
お父さんは生家にいるのだが、彩さんと伊藤さんとお兄さんと迎えに行って東京に帰ろうと行っても全く帰ろうとしない。
みんなが自分を邪険にするという。
だから自分はここから動かないと、そして伊藤さんに一緒に住まないかと言うが、伊藤さんは「何故他人の自分が一緒に住んで面倒を見なければいけないのか。他人に甘えすぎだ」という。
これはお父さんに限らず、家族全員に言えることだとは思った。
しかし家族だから意地を張ってしまったり、素直になれないというのもあるのかもしれない。
そして伊藤さんの提案で、三人は生家に残り伊藤さんは車で明日の朝には迎えに来るといなくなってしまう。
夜通し語り合う三人。
次の日、暴風になり昼に伊藤さんが迎えに来る。
東京に帰ろうと声をかけるも、お父さんは帰らないという。
伊藤さんが、今日はホテルとかに泊まって、また暖かくなったり準備が整ったら住めば良いとお父さんに提案すると、お父さんはすんなり言うことを聞きます。
その直後に落雷が落ちて、お父さんの思い出の柿の木が燃えてしまうと同時に家が全焼します。
家が燃える中、お父さんが必死に何かを探していて、お金の類だとみんなは思ったら、お父さんが常に大事に抱えていた段ボールで、中はお父さんがお兄さんの家にいた時に万引きをしていたスプーンのようでした。
全焼した家の跡からスプーンが土に埋もれていて、彩さんは拾います。
このスプーンなのですが、私はスプーン曲げの練習をしていたのだと勝手に思っていたのですが、ネットで検索をすると、スプーン=教え子(生徒)で、教え子の数だけ段ボールにスプーンが入っていたみたいです。
何故万引きをしたのかも、柿の木の件により単純に買うのが勿体なかったのではとの推測もありました。
東京に帰ってからお父さんの元に、元教え子の人たちが訪ねてきます。
お父さんと教え子の人たちはとても楽しそうに会話をしています。
元教え子の人たちを彩さんが駅まで見送る道中で、「教え子の人たちが思ったより先生元気そうで良かった。きっと彩さんが傍にいるからね」と彩さんに言い、彩さんはその言葉を聞き泣いてしまいます。
彩さんはお父さんか伊藤さんかどちらかを選べないで悩んでいるみたいでした。
最後お父さんは自ら老人ホームに入ることを2人に話します。
子どもに残せるお金は無くなってしまって申し訳ないのと、明日から入ると言います。
2人は急過ぎると言いますが、既に契約は済ませていて家賃が発生するので直ぐに入らないと勿体ないと言います。
立ち去るお父さんの背中を2人は見送る中、伊藤さんが彩さんに「俺は逃げないから」と彩さんに伝えます。
彩さんはその言葉を聞いて、お父さんの後を追いかけます。
とにかく本当に伊藤さんが素敵!
単純にたまたま伊藤さんが凄いだけなのかもしれないけれども、家庭菜園にしても、朝ごはんを作って用意していてくれるところにしても、お父さんがソースに難癖をつけたら自分が買ってきますとサラッと言ったり、家族の仲を持ってくれたり。
彩さんの愚痴や発言にさりげなく諭す言い方をしてくれたり、何かあるたびに「◯◯は逃げないですよ」と言うのだけれども、最後の「俺は逃げないから」と言う言葉がどれほど深くて安心を与えることか。
凄く見て良かった!
最初は伊藤さんに不満を持っていたお父さんも、気付いたら伊藤さんを大好きになっている変わる感じもまた良い。
他人が真ん中に入るからこそ上手くいくことってあるけれども、これくらい上手に人の気持ちを理解できる人はなかなかいないとは思うし、肩書きや収入や身長とか年齢とかよりも、これくらいの内面が備わってる人の方がどれほど素敵に見えるかというのも実感した(多分元々はそういう肩書きとか収入とか全て持っていた人だったのだとは思うが)
これはかなり観て良かったです。
機会があれば是非観てもらいたいです。