目次
あらすじ
生と死を見つめなおす人生の軌跡を辿るシリーズ第一弾。
派遣OLの森内は、数年前に死んでしまった母親の遠い親戚の死を警察から聞き、後処理に向かった。
いつもビンボークジをひいてしまう自分に、なぜ私が・・・という思いを抱きながら・・・。
後処理を委託した業者は、意外と若い、これといって特徴のない男性。
顔も知らない親戚のために死の処理をしなければいけない矛盾に腹が立ち、その男性にも文句を言うが、淡々と仕事をこなすのを見て、逆に興味がわき・・・。
「命の足あと」を読んだ感想とその後の自分
作品は『遺品整理業』がメインのお話しだ。
私もこの作品に出逢うまで、その仕事の存在は全く知らなかった。
『遺品整理業』とは、亡くなった方のお部屋の片付けや、清掃、不用品の処分などを請け負うお仕事だ。
昨今孤独死が話題になっているが、孤独に亡くなり直ぐに発見されなかったご遺体というのは、体内の油が溶け出し、床などに染み込んでしまったりすることがあり、ご遺体は警察が対応してくれるそうだが、その後の部屋の清掃などは『遺品整理業』の人が行ってくれるらしい。
人に迷惑をかけない死は存在しない
この作品内でよく目にするのが
「人に迷惑をかけない死は存在しない」
自殺にしても、自然死にしても、孤独死にしても必ず人の死には人が関与して、自分以外の誰かがその後処理をするということだ。
部屋で自殺をした場合でも、朝の通勤電車への飛び降りなどと違い、人に迷惑をかけないように思うが、その部屋は事故物件となり大家さんや近隣の人たちにも迷惑がかかる。
発見が遅ければ、季節によっては遺体が早く腐って異臭を放ち、清掃をしてもなかなか臭いは取れないらしい。
場合によっては下の階にまで腐敗した遺体の液体が漏れる場合もあるそうだ。
人が生きるというのは、それだけで最低限でも生活用品が発生する。
持ち主が亡くなったら、その生活用品の処分のことも考慮しなければいけない。
実際にお年寄りの場合は、生前に遺品整理の依頼をする人も少なくないようだ。
自殺願望がある人に是非読んで欲しい作品
作品内で『遺品整理業』の会社に勤める主人公や社員には、元自殺志願者の人もおり、現場に立ち会ううちに考えが変わっていく。
私自身も元自殺志願者で、暇さえあれば生きるのが辛いと思っていたのだが、この作品を読んで「死」というモノへの浅はかさを感じた。
「自分が辛ければ他人はどうでも良いし、残された人や物などもどうでも良い」
けれども、作品を読むと
「死んだら私の所持品全てが遺品になる」
その概念がとても強くなるように思う。
全てが遺品になるということは、所持品が多ければ多いほど家族や周囲が迷惑をするということだ。
そして残された物や部屋が、関わりのない人たちから見れば、亡くなった人自身の姿となる。
死んだらどうでも良いと思いつつも、実際のところ生きていても所持品は個人の鏡なのは事実だ。
冷静にまだ老衰を考慮するには早い年齢ではあるが、読むと少しでも早めに遺品整理をしたいと思う気持ちになる。
残された人に最後くらいは迷惑をかけないように。
どんな状態で死ぬか分からないのならば、せめて遺品では醜くならないようにしたいなどなど・・・読んだ後から私は自分自身の品物を前よりも力を入れて処分に励んでいる。
残された家族が処分に困るものは自分自身で早めに処分をしたいし、日記や手帳など見られて恥ずかしいものも残さないようにしたい。
そして、出来れば自宅で死にたいと思う人は多いと思うが、身の回りの世話をしてくれる人物がいない場合は例え辛くても老人ホームなどに入居した方が良いようにも思った。
孤独死について自分自身は別に何も思わないが、もし一人で部屋にいる時に亡くなって発見が遅れたとしたら、その部屋を貸してくれた大家さんたちに迷惑が掛かるのは間違いない。
なるべく迷惑を掛けずに死ぬという選択肢をするならば、老人ホームなどで死ぬのが一番良い気がした。
お年寄りに限らず、若者の自殺や、お部屋の住人など様々なテーマが取り上げられており、誰もが一度は目を通して欲しい作品だと思ったので、これを読んで興味を持った人には是非オススメしたい。