映画『コックと泥棒とその妻と愛人』を観た感想 ※ネタバレ含む

あらすじ

大泥棒のアルバートは、今夜も自らが経営するフレンチ・レストラン”ル・オランデ”(Le Hollandais)を訪れていた。グルメを気取っているものの味が分からず、この上なく身勝手で誰彼構わず粗暴な振る舞いをするため、フランス人シェフのリチャードはアルバートを嫌っていたものの、恐れから追い出すことはなかった。

アルバートの妻ジョジーナは夫から虐待されており、彼女も夫を恐れていた。やがてジョジーナはレストランの常連である本屋で学者のマイケルに惹かれるようになり、二人はリチャードの計らいもあって、レストランの厨房で逢引するようになる。しかし、やがて二人の関係はアルバートにばれてしまい、悲劇的な結果を迎える。

悲嘆にくれるジョジーナは、リチャードに助力を請い、アルバートにあるおぞましい方法で復讐を遂げるのだった。

(wikiより拝借)

「コックと泥棒とその妻と愛人」を観た感想

とにかく映像の見せ方が独特でとても美しい作品。

監督:ピーター・グリーナウェイ、音楽:マイケル・ナイマン、衣装:ジャンポールゴルチェ。

各シーンによって色のテーマも決められていて、そのシーンごとに衣装やセットなども変化するところが独特でとても美しいと思わせる映画。

◆厨房は基本緑色◆

◆食事をする場所は基本赤と黒◆

◆トイレは白◆


※綺麗に撮れなかったのですが、実際は衣装もトイレの壁なども全て真っ白なのです

◆本屋は茶色◆

そのシーンの場所に人物が移動すると服の色も変わるところが見ていてとても引き込まれる作品でもある。

衣装をゴルチェが担当していることから、その衣装を見るだけでも見応えは十分のような気もする。

海外版の映画のパッケージの衣装からいかにもゴルチェというデザインは伝わってくるような気もする。

話の内容としては、とても下品で暴力的で常識から外れた最低な男の典型としか言いようがない旦那さんと、その旦那さんが歪んだ愛を与え続けている妻、そしてその妻がレストランで偶然出逢って惹かれあった本屋さんの愛人と、その不倫をしている2人を応援して手助けしてくれる料理人の話。

とにかくこの泥棒を仕事としている旦那さんが酷いが故に妻である奥さんが普通の物静かである男性に惹かれてしまうのもとても理解できてしまうし、その2人の描かれ方は基本大人の描かれ方が多いのだけれども、後々に奥さんの口から語られる旦那さんの話を聞くと何故その行為に愛を求めるのかも理解できてしまうし、奥さん演じる女優さんが結構外見が年配なところがそれだけ長い年月辛い日々を我慢していたのも物語っているように思えてとても良い。

もしも仮に最低である旦那さんの肩を持つとしたら、キッチンで働く男の子が聖歌隊のような天使の歌声を披露するのだが、その声を聴いて自分も昔はそうだった話などをするのだが、最終的には外道に成り下がってしまったが故に今更戻れない開き直りもあるのではないかとも思えてしまえ、少し哀れではある。

厨房の料理人の手助けにより不倫相手の男性の家に行く2人だが、手引きをしてくれたレストランから食事を運んでもらっており、その運んでくれていた男の子が旦那さんと手下に捕まり病院送りにされてしまう。

本屋さんの良心から男の子にあげた本などがら2人がいる場所は見つけられてしまい、妻が男の子のお見舞いに行っている間に不倫相手は暴行を受けた挙句、好きな本のページを鼻の穴や口に押し込められて呼吸器官を塞がれて殺されてしまう。

殺された男性を見つめて女性が「疲れた」と口にするセリフはいろんな言葉の意味が含まれていて胸に響いた。

殺された男性の呼吸器官に塞がれた本のページを全て取り除き、男性が着ていたガウンを丁寧にかけてあげて、男性の周辺に散らばっている本を手でどかしてその隣に横たわり同じ毛布にくるまる妻の様子は本当に切ない。

眠りに着く前に起きたら「あなたのために朝食を作る」という話や「起きたらキスをしてね」と話しかける様子もまた切なくて胸が締め付けられる。

目覚めた時に「キスをしてくれないのね」と言い自分と旦那さんの結婚生活を語る話は、男性が亡くなってから話したという下りとして女性として妙に私は美しく感じてしまった。

その後、妻がレストランの料理人に愛人である男性を料理して欲しいとお願いをするのだが、料理人は断固として断る。

愛した男性を食べて自分の身体の一部にしようだなんて馬鹿げた発想だというのが料理人の意見で、私個人も男性の遺体を料理して欲しいと女性が頼んだ時はそういう意味かと思ったけれども、実際は夫に食べさせたいというものだった。

映画のクライマックスでは、夫に招待状を送りレストランに来させて、泥棒である夫に恨みを持つ人物が参列して料理された不倫相手を運び、皆の前で妻が食べるように強要する。

 

そして最後夫が一口不倫相手の肉を食べた時に妻が銃で夫の頭を打ち抜くという、最後の最後まで奇想天外というか予想不可能な映画なのだが、とにかく本当にお話が淡々と進み綺麗な物語を見ているように映像が流れていく。

この作品は1989年作品とかなり古い作品なのだが、私が見たのはちょうど中学生か高校生の頃でまだ学生だったが今見てもやはり色褪せない素晴らしい作品だなと改めて実感させられた。

芸術美の強い映画が好きな人には是非見てもらいたい作品なので、興味を持った人には是非オススメしたい!

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