映画『万引き家族』を観た感想、家族や人間との関係について考えさせられる作品 ※ネタバレ含む

目次

あらすじ

高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。 冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく―――

引用元:https://filmarks.com/movies/77796

「万引き家族」を観た感想

映画の作品を観る前までは、貧しくて生活苦の家族が子どもに万引きをさせて生活をするような話なのかと思っていたのですが、実際に観てみると・・・何故このタイトルなのかなと思ってしまいました。

撮影中までは”声に出して呼んで”というタイトルだったというのを観終わった後にネットの検索で知った時は、そのタイトルの方が映画の内容には合っているように感じました。

脚本段階では子どもに「お父さん」「お母さん」と呼んでほしいと願う主人公の想いが重点的に描かれており、撮影中につけられていた映画のタイトルは『万引き家族』ではなく『声に出して呼んで』だった

親の死亡届けを出さずに年金不正受給していた実際にあった家族が元になっている作品とのことで、ある家族が多分世の中の人から観たらとても貧しくて”底辺”と呼ばれるであろう家族5人が汚い一軒家で暮らしているのですが、 その家族がある寒い冬の日に団地の1階のバルコニーに薄着で外に出されている女の子を見かけます。

素通りすれば良いものを、家族は薄着で寒い中外に出されている女の子を放っておけずに家に連れて帰ってご飯を食べさせてあげてストーブの前などに座らせて親切に接します。

するとその女の子の身体には虐待の痕があり、安藤サクラさん演じる信代は佐々木みゆちゃん演じるゆりちゃんが可哀想だということで、誘拐なのではという他の家族の意見もありましたが、自分の家でゆりちゃんをりんと名付けて面倒を観ることにします。

このシーンだけでも個人的には私もよく真冬にパジャマ姿や薄着で母親の機嫌が悪くなったり、母親が一人になりたくなると姉と一緒に外のバルコニー(私の家は3階)に出されていました。

最初は映画の中のりんちゃんのように廊下側だったのですが、父親が大企業に勤めていて社宅に住んでいたこともあり、廊下に出されると近所の同じ社宅の人が心配をして家の中に入れてくれたりして、子どもなので寒いよりはやはり映画のゆりちゃん同様に知らない人でしかもおじちゃんではなくおばちゃんだったので、普通について行ってしまいましたが・・・。

しばらくして、おばちゃんが家に送ってくれて一緒について行ってくれた後、思いっきり母親に殴られて怒鳴られていました。

それからは何かあって外に出される時は廊下側ではなくバルコニーで、人が通ったらしゃがんで隠れて見えないようにするようにと言われたりもしたので、結構個人的には身近な題材のように感じます。

実際にりんちゃんがいなくなった後に、両親は捜索願を出してテレビでもりんちゃんが行方不明になったと報じられます。

一緒に生活をしていく上で、りんちゃんはたびたび虐待を受けていた言動をするのですが、信代はそのたびに「りんは悪くない」と抱きしめてあげる様子は胸にくるものがありました。

万引きしたもので生活をしたりしているのは悪いことだし、子どもの教育上どうなのかと問われるといけないことだとは理解しつつも、法の上でいけないことと法には触れないいけないことは何なのかも映画を観ていると考えさせられます。

母親の顔色を伺って話しかけると「うるさい」と怒鳴られるような日常と、貧しいながらも毎日ちゃんと自分の会話を聞いて顔をちゃんと見てお話しをしてくれて向き合ってくれる相手だったり、冷え切った形だけの家族と、血とは別の何かで繋がっていて楽しくみんなで海に行ったりするような家族。

本当の幸せとは何なのだろう・・・。

楽しく家族5人が底辺ながらも過ごしている日常で、ある日の朝に樹木希林演じる初枝が亡くなります。

初枝が死んでしまうと年金の問題や、家から出なくてはいけない問題などが起こることから家族は話合った結果、初枝の遺体を家の中に埋め死んだことを隠ぺいすることにします。

その後、城桧吏くん演じる翔太くんがいつものように万引きをしようとするとりんちゃんが自らの意志で多分お兄ちゃんである翔太くんのお手伝いをしようとかそのような気持ちから万引きをしようとします。

翔太くんはりんちゃんが万引きで見つからないようにわざと品物を盗んで走って逃げて店員に自分を追わせてりんちゃんが捕まらないようにしますが、逃げる時に高いところから飛び降りて足を骨折してしまいます。

翔太くんが入院したことにより、他の家族は翔太くんを置いて逃げようとするのですがそこで警察に捕まってしまいます。

そしてこの5人の家族が実はそれぞれ赤の他人で誰も血縁関係にないことが明らかになっていきます。

信代の妹の松岡茉優さん演じる亜紀さんは、実は初枝の元夫が浮気して再婚した相手の子どもの子どもだったりと複雑な関係が浮き彫りになります。

初枝は元夫の再婚相手の子どもの家に通い仏壇に手を合わせたいと言い、毎月伺ってはお金の催促をしており、その家は亜紀さんの実家だったようで、それとなく初枝は亜紀さんのことを会話に交えるも両親はオーストラリアに留学していると嘘をついて世間体を気にして捜索願なども出していない様子でした。

この描写も本当にお金の催促だったのか、亜紀さんの実家の様子を伺うため故の行動だったのかも正直どちらだったのか私には分からないですが、亜紀さんの実家の家の様子は世間一般では幸せと思われるお金も余裕があり、綺麗な一軒家という描写なところも実際の内情のドロドロした感じからうちの実家も似たような感じの家だったり両親なので、リアルだなと観ていて思いました。

世の中から幸せそうに見える家庭の実態は結構このような家が多いのではないでしょうか。

そして逮捕された翔太くんや亜紀さんは警察の推測でしかない心ない言葉を鵜呑みにして、自分たちは騙されただったり、複雑な思いを抱えます。

りんちゃんは家族の元に帰されます。

信代は家族を庇い、全て自分一人がしたことだと一人で逮捕されます。

翔太くんは施設に入り、一年後に信代からの依頼で翔太くんを連れて治は信代の面会に行きます。

面会に来た治に「あなたは前科があるからまた捕まると刑が重くなるから」と話していて、この二人の関係は夫婦ではなく、過去に信代の夫を元客であった治が信代と二人で殺したことからできている絆のようでした。

そして面会に来た翔太くんに信代は翔太くんは実は車上荒らしをしている最中に、パチンコ屋の車で待たされている子どもだということ、パチンコ屋の場所や車の特徴などを伝えて本当の両親に会いたかったら探せると思うことなどを伝えます。

治はそれを言うために翔太くんを連れて面会に来て欲しいと言ったのかと信代に言いますが、多分信代は逮捕に時に警察の人に、2人は信代と治のことを「お父さん」「お母さん」と呼んでいましたか?という言葉が響いていたのだと思います。

その夜、翔太くんは治に自分を本当に置き去りにしようとしたのかを問い、治は置き去りにしようとしたこと、自分はおじさんに戻ると翔太くんに伝えます。

次の日に、翔太くんがバスに乗って施設に帰る時に治は追いかけたかったのでないかなという・・・複雑な二人の気持ちがとても感じる描写でした。

そしてりんちゃん、もといじゅりちゃんは家に戻った後、また母親から虐待を受けて外に薄着で廊下のバルコニーに出され外の通りを眺めて映画は終わります。

個人的にはこの最後のシーンは、じゅりちゃんの中ではあの家族の元にいた方が幸せで、あの家族の元にまた戻りたいという気持ちなのではないかと思ってしまいます。

血が繋がっているから家族なのか?

この映画を観ると考えさせられるのは「血が繋がっているから家族なのか」という点です。

治と信代は虐待されて拾ってきた子どもを我が子のように大事に育てていたと思いますが、子ども2人が治と信代を「お父さん」「お母さん」と呼ばないという点を観ると二人の中では両親とはまた別の存在だったようにも感じます。

いくら虐待をされても本当の両親は両親でしかないというか・・・。

ここがなんとも皮肉というか辛く感じる点でした。

だからといって、本当の両親の元にいたから幸せを感じられるかはまた別の問題に感じるのが最後のじゅりちゃんのシーンです。

昔の自分で考えてみても、虐待を受けていたから母親を嫌いになれるかはまた別の話で、だからといって知らない人で大事にしてくれる人の子どもになれるかと問われるとそれもまた別の話だったりして・・・子どもの中では自分の両親がこのような人だったらと思う以外の気持ちしかなかったように思います。

時々ネットなどで目にするのが「子どもを産んだことない人間が子育てに関して口出しするな」というのも、子どもを産んだ人間だけが母親になれるという考え方もどうなのかなと思ってしまいます。

母親の定義はあくまでも子どもを実際に産んだ女性というものだけに縛るならばその言葉は正しいでしょうが「万引き家族」の信代を観ると、実際の虐待をする母親よりも母親らしく個人的には感じてしまいました。

父親が協力的ではなく、育児ノイローゼと言いたい人もいるとは思いますが、だからといって子どもを虐待して良い理由にはならないと虐待されて育った個人的には思ってしまいます。

『難民のみかん』という小さな親切、大きなお世話

よく私の母親が口にしていた言葉で”難民のみかん”という言葉がありました。

これは難民の人が貧しくて食べ物に困っているからといって、普段口にできない美味しい食べ物をあげてしまうと、食べてしまった相手はその味を忘れられなくてますます飢える気持ちになってしまうという言葉です。

その味を知ってしまったが故に、その味を再度食べたいと思い、何も考えずにあげた本人に対して「お前がくれなければ知らずにこんな思いをしなくて済んだのに」と恨まれてしまうようなお話しでもあります。

そのように、永遠にできないことは手を差し伸べてあげるべきではないという考え方も世の中にはあるようです。

実際に、以前私が一人暮らしをしている家の近くに小学生の子どもがいて、常にご飯はコンビニのお弁当で食べる場所は家の勝手口でした。

私は住んで直ぐにその子どもの存在には気付かなくて、暫くして気付いた理由は家の門の下から大量の空のお弁当箱のゴミが出ていたことからでした。

あまりの大量のゴミに私は思わず門の中を覗いてしまったのですが、その時にその家のお弁当を外で食べている子どもと目が合って気まずい思いをしました。

家に帰ってからも、寒い日だったこともあり外でお弁当を食べるならば家に呼んであげた方が良いのか真剣に考えたものですが、今の世の中「誘拐」とか何か言われても嫌なので自分の保身から見て見ぬフリをしてしまったのですが・・・・あとから聞いた話によるとその子どもは前妻の子どもで後妻の人から虐められていて、前妻のその子どもだけ外で常にコンビニのお弁当を渡されて食べているとのことでした。

ちなみに後妻の子どもはまた別にいて、その子どもは家の中で普通の手料理のご飯を食べさせてもらっていることを聞き、近所では有名で全員がそのことを知っているが見て見ぬふりをしていると聞いて驚愕したものです。

けれどもたった一回でも家に呼んでご飯をあげたりしたら・・・。

次に会った時も永遠にしてあげれないならば口を出すべきではないのではないのかなど、この件もとても今でも自分はどうすれば良かったのか考えてしまします。

「幸色ワンルーム」の作品と「万引き家族」を一緒にしてはいけない

この作品をとても気になって観た理由としては、以前『幸色ワンルーム』という漫画の実写ドラマ化が決まった時に炎上をしていて、その時のコメントの一つに「なぜ『万引き家族』は良くてこの作品はダメなのか」というコメントをしている人がいて・・・何故そこで『万引き家族』の名前が出たのか個人的にはまだ作品を観ていなかっただけにとても気になっていました。

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幸色ワンルームとは

14歳のある少女は青年に「誘拐」された。少女と誘拐犯の青年は、互いに本心を隠しながらも寄り添う生活で心を通わせ、徐々に絆を深める。生活に慣れると少女は「2人で逃げ切れたら結婚しよう、捕まったら一緒に死のう」と提案し、本格的に「結婚」を前提とした「同居生活」を始める(wikiより)

実際に「万引き家族」を観てからの感想ですと、同じ誘拐のように思う人もいたようですが、個人的には同じにしてはいけないかなと思います。

というのも「万引き家族」は家族の中に女の子を迎え入れていて、男性と女の子という構図ではないからです。

男性一人対女の子の場合『ストックホルム症候群』という言葉あるように”誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床において、被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くこと”であり、本当の恋愛感情なのかは微妙で判断は難しいように思うからです。

あと、どのような理由でも男性が虐待されている女の子を擁護したからといって性的関係などになるのはどうなのかなと個人的には思ってしまいます。

そういう判断から私は『うさぎドロップ』という作品も正直好きではありません。

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こちらの作品は誘拐とかではなく、両親を亡くした女の子を年配の男性が引き取って育てるお話しなのですが、その女の子がその年配男性を成長してから好きになって付き合うという流れのお話しで・・・これも少し違うかもしれませんが『ストックホルム症候群』とあまり変わらないのではないのかなと思います。

育てるとしたらその点もちゃんと子どもに伝えて、それは本当の恋愛感情ではないと言うまでが親の役目なのではないかと思います。

そのような点から「万引き家族」と「幸色ワンルーム」を一緒にしないで欲しいと思いました。

もしも一緒にするならば作「万引き家族」の作品内で、翔太くんとりんちゃんが恋愛関係になったとかいうところで初めて同じ土台で会話をすすめて欲しいようにも思えました。

ただ同じ作品を観ても観た人によって感じ方はそれぞれだと、この件だけでも考えさせられました。

同じ犯罪は犯罪。

いくら可哀想だと思ってしてあげたとしても、このような誘拐と言われる結果になるとしたら(死体遺棄の罪もあるけれども)見過ごして凍死させたり虐待死させた方が良いのか・・・。

児童相談所に連絡といっても、児童施設では今性的犯被害者が男女関係なく増えていることを聞くとそれも子供にとってどうなのかは微妙だなと思ってしまうし、色々とどうしても自分も経験しているからこそ、何が子どもにとって良いのか考えてしまいます。

映画『万引き家族』はフジテレビ系にて7月20日21時地上波初放送決定


地上波で来月放送

120分の映画なのですが、観ている最中や観終わった後も色々と考えてしまう作品なので興味がある人は是非観て欲しいと思います。

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