
「恋する熱帯魚」あらすじ
わたしの人生計画はこう。
地元の大学を卒業したらすぐニューヨークへ出る。
もちろん舞台俳優をめざすボーイフレンドのウィルも一緒。
結婚まではお互い好きなことをして、それから専業主婦になる。
そしていま、憧れの街に住むところまで来た。
ニューヨーカーの気分は悪くない。
おもしろい友達もいるし、あの退屈な田舎町とは大違い。
でも、広告代理店の仕事はただの雑用だし、思ってたほど何かが変わったわけじゃないの。
だからわたしとしては、そろそろ同棲でもして、結婚へと動き出してもいい頃かもしれないと思う。
でも、ウィルにはまだその気がないみたい。
なぜなら、彼は自分のやりたいことに夢中だから。
ほんとうにそれだけ?
ウィルの周りにいる美しい女優の卵たちが気になるのは、ちょっと太めで自信のないわたしの思い過ごし?
サマーストックに出演するウィルは、この夏3カ月もニューヨークを離れるという。
一緒に来てくれ、とは今のところ言われてない。
一緒に行っていい?と自分からきく勇気もない。
マンハッタンの暑い暑い夏が、ひとりぼっちで過ごす夏が、始まろうとしてる。
(※本の見開き参照)
「恋する熱帯魚」を久し振りに読み返した感想
この本を手にしたのは本屋で時間を潰すために店内をふらふら歩いていたときに、ふと表紙のデザインの可愛さが目に入り私は足を止めてこの本を手にとった。
鮮やかなオレンジ色に金魚鉢に入った金魚とNYの街並み、本の装飾も海外使用のペーパーっぽい柔らかい素材なのもとても印象に残った。
タイトルは『恋する熱帯魚』。
タイトルもまたなんとも中身の想像ができず、私は迷うことなくこの本を手にとりレジに向かったのはいうまでもない。
この本を購入したのは、この本が初めて店頭に並んだであろう2003年7月頃の話。
あれから18年も時間は流れたのだけれども、その間も私は時々この本を手にして何度か読んでいる。
初めて作品に触れた時は、主人公と同じような男性と恋愛をしていたことから、やたらと主人公に寄り添った思いで本を読み進めていた。
そして本の結末を知った私は、「私と主人公は違う」と何度も読み返すたびに思い、当時は無意識であったであろう、恋人と会えない時間を自分磨きの時間と称して外見を磨いたり本を読んだり勉強したりしていたことを思い出す。
今回改めて読み返すと、なんとも過去の自分さえも思い出すようで恥ずかしいやら懐かしいやら・・・けれども世の中の女性の何人かはこの主人公”トレイシー”と似たような経験をしているのではないのだろうかと思わずにはいられない。
作品の中のトレイシーのように、頭では夢追い人の恋人は自分と不釣り合いだと理解しつつも、どこか諦めきれずに、いつまでも恋人の“ウィル”にすがっている感じに生きている。
今の私から見たら、こういう不安にさせる男性と一緒にいても幸せになれないのは一目瞭然なのだけれども、この本を手にした当初のトレイシーと同じ立場だった私は、全くそのことに気付けなかった。
本の中のトレイシーもそうだけれども、人というのは他人のことはちゃんと見えるのに、自分のこととなると全く正確に見えないし、頭で理解していても、実際そのような場面になると上手くいかなかったり・・・。
そして身近の本当に自分を幸せにしてくれる素敵な男性には気付けなかったり・・・。
薄々本当は理解していながらも、気付かないふりをして思い込もうとしたり、改めて読むと本当にこの作品は若さゆえの不毛な恋愛が描かれていると感じる。
けれども、なのに、なのにだ!何故か何度も何年かすると読みたくなるのが不思議。
それくらいに個人的には文章も日本の作品っぽさはなく、いかにもアメリカの本という感じの内容が散りばめてあり、ネガティブの内容なのに文面はやたらとコミカルに描かれていたり、読んでいて楽しい前向きな気持ちになれるのは確かだ。
「ブリジット・ジョーンズの日記」が好きな人は多分好きだと思う作品。
既に廃盤の作品なので、もし興味があったら中古を探して手にしてみて欲しい。
そして今回この本はまだ存在しているのかを調べて驚いたのが、この本のカテゴリー、話しの内容不毛な恋愛としか思えないのに、何故か『ハーレクイーン』で売られていてビックリ(もちろん中古ね)。
絶対に中古で売っている人、本の中身を読んでいないだろうなとしか思えない。